2017年に流行ったもの徹底総括|インスタ映えからSwitchまで熱狂の真相
スマートフォンの保有率が急速に拡大し、個人の発信力が従来のマスメディアの拡散力を凌駕し始めた転換点として、記憶に刻まれているのが2017年です。タイムラインを埋め尽くした鮮烈な色彩、日常会話に浸透した皮肉めいたフレーズ、品薄が続き店頭から姿を消したゲーム機――あの日、日本中を包み込んだ熱狂は何だったのでしょうか。
あれから時間が経過した2026年の視点で見つめ直すと、当時生まれたトレンドの多くが単なる一過性の流行にとどまらず、現在のデジタル消費やコミュニケーション様式の基盤を決定づけていたことが分かります。当時の公式記録や販売統計、関係者の証言をもとに、2017年を象徴する社会現象の深層を解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2017年は「視覚的インパクト(インスタ映え)」と「暗黙の人間関係(忖度)」が消費と世論の主役に躍り出た構造変革の年だった。
- 要点2:Nintendo Switchやうんこ漢字ドリルのように、「未体験の体験価値」を提示したプロダクトが記録的ロングセラーを確立した。
- 要点3:ハンドスピナーの急激な沈静化とウェルネス市場(睡眠負債)の定着を分けたのは、「生活必需性」と「文脈の深さ」の違いだった。
【社会現象の真相】2017年に流行ったものと熱狂の背景を徹底解説
「2017年に流行ったものを覚えていますか?」と問いかけられたとき、誰もが真っ先に思い浮かべるのが「2017年流行語大賞」の年間大賞をダブル受賞した「インスタ映え」と「忖度(そんたく)」です。一見するとまったく無関係に見えるこの2つの言葉は、実は「他者の視線を強烈に意識する日本社会の空気」という同一のコインの裏表でした。
写真共有SNS「Instagram」が若年層から主婦層、ビジネス層へ爆発的に浸透したことで、あらゆる商品開発や飲食店のメニュー設計に「カメラを向けた瞬間の見栄え」が最優先される「インスタファースト」の概念が定着しました。新大久保に長蛇の列を作った「チーズタッカルビ」は、熱々の鉄板の上で長く伸びるチーズのシズル感がSNS動画と完璧に噛み合い、一大ムーブメントへと昇華しました。
一方で、政治報道をきっかけに拡散した「忖度」は、言葉にされない相手の意図を過剰に汲み取る日本特有の組織力学を可視化しました。大手コンビニエンスストアが「忖度御膳」という弁当を商品化して予約完売を記録するなど、シニカルなユーモアとして消費される現象まで巻き起こったのです。
ハードウェアの分野では、任天堂が2017年3月3日に投入した「ニンテンドースイッチ(Nintendo Switch)」が据置機と携帯機の境界を完全に破壊し、世界的な品薄騒動を引き起こしました。さらに、海外から突如上陸した手遊び玩具「ハンドスピナーブーム」や、NHKスペシャルを端緒に健康リスクとして認知された「睡眠負債」など、ライフスタイルそのものを揺るがすキーワードが次々と日常を塗り替えていきました。

【ヒット商品ランキング】2017年を象徴するプロダクトと消費構造の劇変
日経トレンディが発表した「2017年ヒット商品ベスト30」の選考基準において、中核に据えられていたのが「未体験の体験」と「ユーザーも気づかない隠れたニーズの忖度」でした。当時上位を席巻したアイテムを検証すると、単に便利なだけでなく「誰かと共有したくなる驚き」が緻密に設計されていた事実が浮き彫りになります。
特に教育界に激震を走らせたのが、文響社が2017年3月24日に発売した『うんこ漢字ドリル』です。小学校1年生から6年生で習うすべての漢字の例文(計3,018個)に「うんこ」という単語を配するという前代未聞のコンセプトは、子どもたちの学習意欲を劇的に変えました。出版不況が叫ばれるなか、シリーズ累計で数百万部を超える異例の社会現象となり、キャラクター「うんこ先生」の存在とともに知育の常識を覆しました。
| 項目・ヒット商品 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| Nintendo Switch | 初年度国内販売台数約340万台超、世界累計は後に1億4,000万台を突破 | 定価29,980円(税別)、定価以上の転売価格が横行 | 据置・携帯ハイブリッドという唯一無二の形態がゲーム史のパラダイムを転換 |
| うんこ漢字ドリル | 全3,018例文にうんこを使用、発売2ヶ月で約148万部を突破 | 学参・ドリル市場の平均初版は数千部〜1万部規模 | タブーと学習の融合によるコペルニクス的転回。親子の学習ストレスを解消 |
| ハンドスピナー | 玩具店・露店・ECで数千万個単位が流通、数分間回転するベアリング玩具 | 1個数百円〜数千円程度(低価格帯が中心) | デジタル疲れの反動としてのフィジカルな触覚快感。半年で急速に鎮静化 |
| チーズタッカルビ | 新大久保の韓国料理店待ち時間最大3時間、外食チェーンへ瞬く間に波及 | 1人前1,200円〜1,800円前後 | 「動画映え」の極致。外食におけるシズル感共有のモデルケースを確立 |
| 睡眠負債(概念) | NHK特番放映後、関連書籍が続々ベストセラー入り。睡眠改善市場の起爆剤 | 睡眠時無呼吸症候群など医療領域にとどまっていた睡眠概念 | 慢性的な寝不足を「負債」と表現した言語化の勝利。後の機能性飲料特需の布石 |
これらのヒット商品を俯瞰すると、2017年の消費者は「機能の優秀さ」だけで財布の紐を緩めていなかったことが明白です。「自分の感情がどう動かされるか」「その体験を誰かに見せたときにどんな反応が返ってくるか」という、感情価値と共有価値の双方が揃ったプロダクトだけが、メガヒットの頂点へと駆け上がりました。
【カルチャー&エンタメ】「35億」から「けもフレ」まで時代を揺るがした熱狂
エンターテインメントシーンにおいても、強烈な個性と予測不能なバイラル現象が次々と巻き起こりました。バラエティ界の頂点を極めたのが、お笑い芸人・ブルゾンちえみによる「35億ブルゾンちえみ」のネタです。
「キャリアウーマン」に扮し、男性コンビ「with B(ブリリアン)」を従えて流麗な腰つきで語りかけるスタイルは、バックに流れるオースティン・マホーンの楽曲『Dirty Work』とともに全国を席巻しました。同年の『24時間テレビ』チャリティーマラソンランナーに当日抜擢され、見事に完走を果たした場面は、彼女のブレイクを決定づける象徴的な出来事となりました。「地球上に男は何人いると思っているの?……35億」というフレーズは、自己肯定感を求める当時の女性層の共感を鷲掴みにしたのです。
アニメーション分野では、ダークホースとして登場した『けものフレンズ』が深夜アニメの枠を飛び越える異例のブームを巻き起こしました。当初は低予算の3DCGアニメと見なされていたものの、たつき監督による緻密で深みのある世界観設定と、「すごーい!」「きみはフレンズなんだね!」といった無邪気で肯定感に満ちたセリフ回しが、激務に疲れたネットユーザーの心を直撃しました。知的な考察班と癒やしを求める層がSNS上で合流し、オープニングテーマ『ようこそジャパリパークへ』は音楽チャートを席巻しました。
2017年の音楽シーンは、ストリーミング黎明期における名曲が百花繚乱の様相を呈していました:
- DAOKO × 米津玄師『打上花火』:アニメ映画の主題歌として配信・YouTubeで記録的な再生数を記録。儚い夏の情景を描き、2010年代後半を代表するアンセムに。
- 星野源『Family Song』:前年の『恋』の社会現象を経てリリースされた温かなソウルナンバー。過渡期にある「家族のあり方」を肯定し共感を呼んだ。
- TWICE『TT -Japanese ver.-』:指で泣き顔を作る「TTポーズ」が女子中高生の間で大流行。K-POP第3世代の上陸を強烈に印象づけた。
- Ed Sheeran『Shape of You』:洋楽の枠を超えて街頭やメディアでヘビーローテーションされ、日本国内のサブスクリプション定着を加速させた。
- WANIMA『やってみよう』:au三太郎CMソングとしてポジティブなメッセージを届け、ストレートなロックサウンドで幅広い世代を魅了。

【実態検証】利用者の生の声と現場目線で見えたリアル
当時の現場で実際に何が起きていたのか、生活者や現場スタッフの証言を検証すると、ブームの熱気と同時に生じていた「ある種の狂騒」が見えてきます。
ハンドスピナーのブーム最盛期、都内の玩具量販店スタッフは当時の異様な光景を次のように語っています。「朝の開店と同時に小学生からスーツ姿のサラリーマンまでが棚に殺到し、毎日数十個単位で売れていきました。ただベアリングが回るだけの金属片に、なぜこれほど人が群がるのか現場の我々すら理解が追いつかない熱狂でした」。ネット掲示板やSNSでは「手持ち無沙汰なときに回すと異常に集中できる」「禁煙のイライラ防止に最適」という口コミが急速に拡散し、誰もがその回転時間を競い合っていました。
新大久保のコリアンタウンでは、チーズタッカルビを求める若者がメインストリートから路地裏まで溢れかえりました。来店客の手元には必ずスマートフォンがあり、鉄板の上のチーズが持ち上げられる瞬間を一斉に動画で撮影していました。当時のSNSには「2時間並んで食べたけれど、味以上に動画が撮れた達成感の方が大きかった」という投稿が溢れており、食事という行為が「胃袋を満たすもの」から「コンテンツを生成する舞台装置」へと完全に変質していた現場がそこにありました。
一方で、Nintendo Switchの発売当初は深刻な品薄が続きました。大手家電量販店の抽選販売には早朝から数千人が列を作り、SNS上では「今日も抽選に外れた」「いつになったら買えるのか」という悲鳴が連日トレンド入りしました。この「手に入らない焦燥感」がさらなる欲望を煽り、社会的なプレミアム感を加速させる結果となったのです。
一般に知られていない盲点とネットの誤解|一発屋神話のウソ
2017年のブームを語る際、「あの年に流行ったものは、所詮どれも一発屋で終わった」という言説がネット上で散見されます。しかし、この見方は事実の一面にしか過ぎず、本質を見誤っています。
例えば、ブルゾンちえみとして一世を風靡した藤原しおり氏について、「消えた」と表現するのは明確な誤謬です。彼女はメディアの消費スピードと自身の表現活動のギャップを冷静に見極め、2020年に所属事務所を円満退所。イタリア留学や執筆活動、環境問題・カルチャーを発信する文筆家・クリエイターへと自律的なキャリアシフトを遂げました。ブームの渦中に消費され尽くすことを拒否し、自らのアイデンティティを取り戻したその軌跡は、タレントの持続可能な生き方として極めて示唆に富んでいます。
また、ハンドスピナーは玩具としての熱狂こそ短期間で終息したものの、その根底にあった「フィジェット(手持ち無沙汰を解消する触覚玩具)」という概念は、大人のストレスマネジメントツールやADHD等の集中支援アイテムとして、医療・ウェルネス分野にしっかりと根を下ろしています。
「睡眠負債」という言葉も同様です。一過性のスローガンに終わることなく、この問題意識は後の「睡眠改善薬」「リカバリーウェア」「機能性表示食品(睡眠の質を向上させる乳酸菌飲料など)」という巨大な巨大ヘルスケア市場へと地続きで直結しました。2017年に蒔かれた種は、姿形を変えながら現在も私たちの生活インフラとして機能し続けています。
【プロの結論】体験消費の本質と2026年に残された教訓
消費社会学およびメディア心理学の視点から2017年を総括すると、この年は「見栄のための承認欲求」から「共感と追体験の可視化」へと個人の欲望が構造変化を遂げたマイルストーンでした。
かつての流行は、テレビや雑誌が提示する「憧れのライフスタイル」を大衆が模倣するトップダウン型でした。しかし2017年は、ユーザー自身が「インスタ映え」する被写体を能動的に見つけ出し、SNSというプラットフォームを通じて水平方向に熱狂を増幅させました。Nintendo Switchが売れたのは単にグラフィックが綺麗だったからではなく、「外へ持ち出して友達と画面をシェアできる体験」があったからです。
ここから私たちが学ぶべき教訓は明確です。「可視化できる体験(絵になること)」と「実用的な価値(生活の課題を解決すること)」が両立したプロダクトだけが時代を超えて生き残り、どちらか一方を欠いたものは急速に消費され風化するという残酷な市場の真理です。

【2017 年 流行っ た もの】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2017年のユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた言葉は何ですか?
A1:2017年は「インスタ映え」(受賞者:CanCam it girlの白石美帆氏ら)と「忖度」(受賞者:株式会社ヘソプロダクション代表取締役・稲本ミノル氏)の2語がダブルで年間大賞を受賞しました。SNS文化の浸透と政治・社会風刺が交錯した象徴的な選考結果となりました。
Q2:2017年に大流行したハンドスピナーはなぜ急速に姿を消したのですか?
A2:ハンドスピナーは構造が極めてシンプルで誰でも参入できたため、市場に安価な粗悪品が乱立しました。また、「ただ回す」以外のゲーム性やコミュニティ要素、機能的な発展性が乏しかったため、生活者の飽きが急速に進んだことが主因です。ただし、指先を動かしてリラックスする「フィジェットトイ」のジャンル自体は現在も確立されています。
Q3:2017年の音楽シーンで最も社会的な影響を与えた楽曲は何ですか?
A3:DAOKO × 米津玄師の『打上花火』がYouTubeやストリーミングを通じて歴史的ヒットを記録したほか、星野源の『Family Song』、TWICEの『TT -Japanese ver.-』などが各方面で社会現象となりました。CD販売数だけでなくデジタル配信・動画再生数がヒットの主戦場へと移行した年でした。
Q4:当時大ヒットした『うんこ漢字ドリル』はその後どうなりましたか?
A4:一過性のギャグ本に終わることなく、算数や英語、未就学児向けドリルや啓発本へと横展開され、「うんこドリル」シリーズとして累計1,000万部を超えるメガブランドへと成長しました。官公庁(文部科学省や警察庁など)との交通安全・防災コラボレーションも実施されるなど、日本の公教育・啓発の枠組みに定着しています。
まとめ:2017年の熱狂が現代のデジタル社会に遺したもの
2017年に流行ったものを振り返る作業は、私たちが生きる現代のデジタル空間が「いかにして形成されたか」を解き明かす旅でもあります。「インスタ映え」が求めた視覚的な快感は現在のショート動画全盛時代の文脈を作り出し、「忖度」が浮き彫りにした空気の支配はSNS上の同調圧力やコンプライアンス意識へと進化しました。
手のひらのスマートフォンで誰もがメディアとなり、誰もが時代の共犯者となったあの年。通り過ぎていった無数のブームの残響は、2026年の今も私たちの日常の選択やコミュニケーションの作法の中に、静かに息づいています。 (出典: 2017 年 流行っ た もの(Yahoo!ニュース))